「オススメ本、漫画、映画」カテゴリーアーカイブ

七帝柔道記

表紙を開くだけで、もわっとした汗の熱気と臭気に包まれそうな青春小説。その舞台となるのがこれまた凍てつく北の大地だから、なんともいやはや。

本作品は、著者の増田さんご自身の自伝的私小説の形をとっており、実在の人物とそうじゃない方も入り乱れて登場してきますが、ほぼ実話といってよさそう。

北海道大学柔道部(当時は七帝戦で最下位が続く弱小)を舞台に、講道館が推し進める現代柔道ではなく、戦前の高専柔道の流れをくむ寝技中心の特殊なルールの中で、まさに畳の上でのたうち回りながら彼らの人生と誇りをかけ柔道に打ち込む姿を描いた快作。まさに昭和です。(実際の時間軸は1984年入学からスタートしているので、世はバブルに向かい真っ盛りの頃)

私が読みながら浮かんだのは、司馬遼太郎先生の「竜馬がゆく」で描かれたような一心に修行に打ち込む若者達の青春の輝きと、ちばあおき先生の「キャプテン」「プレイボール」のような等身大の主人公達が汗みどろ泥まみれで涙を流し成長していく姿。

自分自身も北大OBの一人ですので、北18条門から入った左手にある柔道場から教養学部の光景、物語に登場する定食屋や寿司屋の佇まいが生き生きと脳裏に蘇りました。まさかあの柔道場でこんな世界が繰り広げられていたなんて・・夢にも及ばず。

「なぜ北大に来てまで、将来柔道で食っていくわけでもないのに・・こんなに苦しい練習をしなければならないのか・・」と泣き続け、それでも練習の日々を送る部員達。周囲を見渡せば、学業はもちろん、旅行だデートだと青春を謳歌するクラスメイトの姿。

このあたりは、全日本戦の団体優勝を部の目標として本気で掲げ、週7日のダンス練習に明け暮れた北大競技舞踏部員の一人としては半分ほど実体験とかぶるものの・・・

ダンスではどんなに練習しても毎日まいった無しで締め落とされるような死の恐怖も感じませんし、部内恋愛禁止が建前とはいえ女子もふんだんに日々の中にいますし、どうやっても勝てない柔道エリートに相当するような怖い人達(道警の人達とか)もいませんでしたし(最近のジュニアあがりとかはこれかも)、つくづく自分の選んだ道で良かった・・と安堵(笑)

個性あふれる先輩・後輩の登場人物の中でも、特に広島出身の内海先輩が魅力的で、増田さんと対談されている記事などを丹念にネットで追いかけてしまいました。(それ以外の実在の登場人物や、実際に滝澤さんや増田さんが4年目の時の七帝戦の動画とかもチェック・・オタクか?)

ちなみに本書の読み方は七帝戦(ななていせん)ですが、自分達の部活では七帝戦(しちていせん)と読んでおりました。今は七大戦(ななだいせん、しちだいせん)と呼ぶのが正式名称だとか。未だに旧帝大の時代じゃないですからね。

2013年発売で手元に3年以上持っておいて今更ですが、2017年前半で読んだ本の中で最高!という評価をつけたいと思います。めっちゃ長くて、熱いので、ご注意を。

漫画もチェックしないと!

 

蜜蜂と遠雷

2017年直木賞と本屋大賞をダブル受賞したというニュースを聞いていたので、図書館で見かけ思わず即借りしてしまいました。

蜜蜂と遠雷・・・って、音楽の話ということは書評か何かで読んだ気がしますが、具体的には予備知識ゼロで対面。

金曜の夜19時にページを開き、夜23時にページを閉じるまで、完全に一気読み。出だし数ページを読んだだけで魂をもってかれ、そのまま物語の世界に引きずり込まれる嬉しい離脱体験。

あらすじや感想はあちこちにあるのでさほど繰り返しませんが、簡単にまとめると、国際ピアノコンクールを舞台に、20歳前後の3者3様な天才ピアニスト達と、中年と呼ぶには失礼な20代後半の天才未満の若者にスポットを当て、彼らの人間模様や葛藤、出会いと成長、そして活躍を描く作品。

文章でこれだけ音楽を豊かに描くって試みも凄いです。のだめカンタービレで、漫画で音楽を描く様が凄いと思いましたが、この作品はさらに遥か上をいっている気がしました。名前は聞いたことあれど具体的に旋律が頭に浮かばない数々のピアノ曲の情景を読み手の脳内に生き生きと想像させるのですから。

彼らが一次予選、二次予選とそれぞれ選んで弾いた曲は実際どんな曲なのかが気になってしまい、Youtubeで順番に聴いてます。

「構想5年、執筆7年、著者渾身、文句無しの最高傑作!」と帯にあったそうですが、素晴らしい結果が出て良かったですね。

著者の恩田陸さんは過去に2005年の本屋大賞をとった夜のピクニックを手にとって、爽やかだなー・・と思ったものの他の作品にまでは手が伸びておりませんでした。他にも沢山作品があるので読んでみたい様な、これがやはり最高傑作だったのか?という感想になるのか・・

しかし、蜜蜂はわかるけど、遠雷って・・一体どういう意味じゃい、、と思いながら、亡きホフマン先生の存在にまで思いを馳せてしまいました。そして思ったこと、やはり娘達にはピアノを本気の習い事としては強いる必要はないな・・・と。(頑張るのは天才の少年少女達にまかせようと思います)

未読の方に全力でお勧めします。

 

驚きの・・女性〜ワンダーウーマン

驚きの・・白さ、じゃなくて女性。あるいは驚異、驚嘆、うーむ、なにが適当でしょうか。

やっぱり、無難にワンダーウーマン、が邦題ですね。

予告トレイラーの時点で正直気になっており6/2の封切りと共にいそいそと鑑賞しておきました。これまで完全ノーマークだった主演のガル・ガドットさん、めちゃめちゃ美人さんです。ストーリーは・・どうでもいいや。

ガル・ガドット、イスラエル出身の女優さん、32歳、、、ワイルドスピードMAXに出ていたそうですがこのシリーズは観てませんので映画初見。スカーレット・ヨハンソンと同い歳なんですね。この美貌はアンジェリーナ・ジョリーを彷彿させます。ちょっと眉間に皺を寄せた時の表情などたまりません。

慌てて未鑑賞だった前作の「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」に出演するご様子もチェック。正直、この前作では完全に謎の女超人・・ですが、今作のワンダーウーマン誕生秘話があって大分と理解が深まりますね。

・・・もちろん、アマゾン族の女王にしてゼウスの娘、何千歳も生きているという設定がスッと頭に入るかは人を選びますが・・・

(一緒に写りたいが、誰かに撮影頼むほどの勇気無し)

版元である、マーベルと並ぶアメコミ大手のDCコミックスが今後ワーナーと共にどのように攻勢をかけてくるのかが興味深いです。アベンジャーズの映画化作品(マーベル・シネマティック・ユニバース)にまんま対抗する感じのジャスティス・リーグも今年11月公開予定、予告トレイラーが映画館で流れるようになりました。世界観を同じくする今後の一連の作品群をDCエクステンッデッド・ユニーバースと呼ぶのだそうです。

時系列的にはバットマンvsスーパーマンの数ヶ月後がジャスティス・リーグ。ワンダーウーマンはそれ以前のダイアナが人間世界に出てきた第一次世界大戦中の話なので、DC・・ユニバースの4作目。見逃しているスーサイド・スクワッドもどこかで観ないと。。

せっかくアメリカにいたのでアメフトなどのスポーツに詳しくなりました、、という話はよく聞きますが、アメコミに詳しくなったという話は聞いたことがありませんので、ハリウッド映画鑑賞活動の中でもディズニーとアメコミ系に力点を置きたいと思います。

その他、最近映画館で観た映画。

トム様映画。こちらはダークユニバースというモンスター映画を現代風に焼き直しユニバーサルがシリーズ化していくそうで、これが第一作目。呪われた王女役のソフィア・プテラが素敵ですが、ストーリーは今ひとつか。

戦闘能力が低い役柄のスカーレットヨハンソンを久しぶりに観ました。コメディのはずなんですが、正直笑えない。

ローマ人の物語、はじめました

3月の月次目標は「歴史本を5冊読む」としたので(→歴史からも学ぶ)、超有名どころながら未読だったこちらのシリーズに手を出すことを決めました。

 


最初はちょっとだるいかな・・と思ったのですが、もう、3巻からのハンニバルとスピキオの戦いには大興奮。

これは歴史書や教養のためのものというよりも・・単純に娯楽作品だと思いました。なぜローマはあんなにも栄え、そして滅びていったのだろうか・・という壮大なテーマはあるにしても、それぞれの時代に生きた英雄ともいえる人物に光を当てており興味深いです。(絶対に塩野先生の私見に満ち溢れてる)

三国志で言えば、正史というより演義系。それも書き手は吉川英治か横山光輝(それは漫画か・・)、北方謙三までは・・いっていないか、という感じです。もう少し堅いかと思ってました。

スピキオ、惚れ惚れしますね。そして若い頃は格好良かったのにやっぱり禿げて(イタリアだし)、最後はあれだけ身を捧げてきたローマの人々にまで放り出されちゃって・・(涙)

カルタゴの名将ハンニバル、ローマの天才戦略家スピキオ、この二人の戦いを他の方が描いた作品にも立ち戻ってまた読んでみたいと思います。(人気の漫画もあるみたいですし・・)

そういえば昔好きだった特攻野郎Aチーム。リーダーのジョン・スミス大佐のニックネームはハンニバルでした。彼がそれほど凄い戦術家だった印象はないけど。。

話は戻り、ローマ人の物語。人物に光を当てる一方で、軽装歩兵と重装歩兵の装備や武器の違いを事細かに解説したり、携行する食料について仔細に分析したり、とにかく凄い情報量。

相当読みこなしていくのに時間はかかりそうですが、全43冊。ローマは一日してならず、当然一日どころでは読み切れず、ということで出張時のお供本として携えていきたいと思います。

居眠り磐音をNYにて読了〜祝着至極に存じます

5月から貪るように読み続けてきた佐伯先生の居眠り磐音シリーズ、大団円を迎えたシリーズ最終巻、51巻を読了。

感動に打ち震えながら溢れる涙をこらえきれず@マンハッタンはブロードウェイ近くのスタバ。あまりに不審者すぎてNYPD通報される勢い。

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それにしても一介の浪人の人生絵巻を(元々中規模の藩の中老の嫡男だから坊ちゃんですけども)ここまで丁寧に追いかけ、波乱万丈な日々を通じて広がる周囲の人々との温かな交流を描き、身分制度の厳しい江戸にありながらも、上下ごっちゃごちゃなファンタジーを見事にまとめ上げられた手腕が素晴らしい。

佐伯先生がご自身のエッセー中で書かれているように、鳴かず飛ばずの初版作家、リストラ作家でいよいよ進退詰まった際に「あとは官能小説か時代小説しかないですね」と編集者の方がポツリともらされたという言葉がまさに慧眼。人生を変えた一言。(読者的にも感謝、感謝)

57歳で初めて書いた時代小説で一気に売れっ子作家へ転身されるとは、全くもって、祝着至極に存じます。。。

佐伯先生は磐音シリーズ以外にも、吉原裏同心シリーズ(既23巻)、古着屋総兵衛シリーズ(旧11巻、新12巻)、他にも何シリーズか多数の既刊があって(どんだけ多作なの!?)次をどうしたものか迷ってしまいます。

1-2ヶ月他の作家さんらにも目を向けた後、また佐伯作品を手に取ってみようかと思います。(再びハマってしまうのは必至かも)

最後に磐音読本を手に取ったら、今津屋の老分、由蔵さんとおこんの出会いを描いた中編が収録されていて、また胸がキュンとしてしまいました。

古くは司馬遼太郎先生にはじまり、池波正太郎先生の主な作品を貪り読み、最近では女料理人を描いた高田郁先生のみおつくし料理帖シリーズや、江戸の市井の人々の暮らしを描いた山本一力先生の作品群をどっぷり読んだ上でたどり着いた佐伯先生のシリーズ。佐伯先生の作品は勿論、時代小説というジャンルにたっぷりと未読作品が残っているのが嬉しくてしょうがないです。